女性の不妊原因
女性の年齢が高くなると、妊娠する力(妊孕性)が低下します。これは卵子の質の低下が大きな要因となっています。そのため年齢とともに妊娠しづらくなり、35歳を過ぎるとその傾向は顕著になり、40歳を過ぎるとますます難しくなります。そのほか、女性特有の子宮筋腫、子宮内膜症などの疾患が増えることなどもあげられます。
また、加齢により、妊娠に必要な各種機能の低下(ホルモン産生の減少、卵管のピックアップ機能の低下、頚管粘液分泌の減少、卵巣や子宮の血管の動脈硬化)が生じることも原因です。女性だけでなく、男性も加齢による影響は大きく、40歳前後から、精子を作る力が低下し、精子の数と質(受精能力)が低下します。
排卵
月経周期日数の正常範囲は25日~38日間です。月経周期がこれ以上長い場合は、排卵障害の可能性があります。25日未満と周期が短い場合は、高温期が短い状態(黄体機能不全)や排卵が早すぎる状態(卵巣機能の低下)の可能性があります。このような方は、基礎体温を1か月測定して記入し、早めに受診してください。まずは、安定した月経周期があるかどうかがポイントになります。
排卵障害となる原因には、プロラクチンというホルモンの過剰分泌、男性ホルモンの過剰分泌、甲状腺機能の異常、体重異常(肥満、極端なダイエットや体重減少)などがあります。また、日本人の平均閉経年齢は50歳くらいですが、まれに20代、30代で卵巣機能が極端に低下してしまう早発卵巣不全(早発閉経)が原因となっていることもあります。
●排卵のグラフ
卵管
卵管が詰まっている(閉塞)、狭いところがある(狭窄)、腸などの臓器とくっついている(癒着)などで、卵管采が卵子をピックアップできない、精子が通れない、受精できない、受精卵が移動できないなどが不妊原因になります。
これらの症状を引き起こす原因として、性感染症の1つであるクラミジア感染症があげられます。とくに女性は、クラミジアに感染しても無症状のことが多く、このため気づかないうちに卵管閉塞や癒着を起こすことがあります。そのほかでは虫垂炎などの骨盤内手術や、子宮内膜症がもとで卵管周囲の癒着を起こしていることもあります。
子宮
子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープなどが原因で着床が妨げられていることがあります。
また、子宮の形の異常により着床障害が疑われる場合もあります。子宮の形態異常があっても問題なく妊娠、出産している女性も多いのですが、場合によっては、不妊または、妊娠しても流産を繰り返してしまう原因となります。
頸管
排卵期には、頸管粘液が増加し精子が子宮へ進入しやすくなります。
しかし、子宮頸部(子宮頸ガンなど)の手術の影響、クロミッド内服の影響や、加齢などにより頸管粘液量が少なくなり、精子が子宮へ進入しにくくなることがあります。また、粘液中に抗体が分泌され精子が進入できないこともあります。
免疫
精子に対して抗体を持ち、精子を凝集させたり(抗精子凝集抗体)、動けなくしたりします(抗精子不動化抗体)。この抗体が頸管粘液中に分泌され子宮や卵管、また受精の場面でも不動化抗体が働き、不妊原因になることがあります。
原因不明(機能性不妊)
検査をしても、どこにも不妊の原因が見つからない場合をいいます。検査に異常や問題がないことから大丈夫ということではなく、妊娠していないという事実があるわけですから、検査では明らかにならない原因があると考えるのが妥当です。
たとえば、卵子が卵管へと取り込まれたか(ピックアップ)、受精ができたか、受精卵が成長したか、受精卵が子宮に着床できたか、また、卵子や精子の質のそのものに問題があるのかもしれません。しかし、これらは通常の検査で明らかにすることができないため原因不明となってしまいます。