抗リン脂質抗体が妊娠初期の絨毛を傷害し、絨毛の発育を阻害するといわれています。また、血管壁を傷害し、血栓を生じやすくします。
低用量のアスピリンの内服や、ヘパリンの自己注射により、血液が固まるのを防ぎ、血栓形成を予防します。妊娠が判明したら、すぐ(妊娠4週)から、治療を開始します。通常、アスピリンの内服は、妊娠32~34週まで、ヘパリンの注射は、分娩24時間前までで中止します。(分娩する病院の方針によって異なります。)
だれにでもできるように、自己注射の方法を指導しています。
子宮卵管造影検査と超音波検査、MRI検査などにより、子宮奇形が見つかった場合手術の適応かどうかは、慎重に検討します。子宮奇形があっても、正常妊娠、出産されている方が多数おられます。(80%前後)ほかの原因がないか、よく検査することが必要です。
そして、最も重要なことは、流産したときに「胎児の染色体が正常であったか?」ということです。胎児の染色体異常がみとめられた場合は、流産原因は子宮奇形ではなく、胎児側の問題です。胎児の染色体正常の流産を繰り返していると判断された場合、子宮奇形の重症度も加味して、手術療法を考えます。
したがって、流産したときに、絨毛の染色体検査を行うことが、その後の治療に大切です。
排卵障害、内分泌異常を伴い、流産率が高いことが報告されています。糖尿病、甲状腺機能低下症、高プロラクチン血症を伴うことが多く、これらの検査も重要です。
体重異常、男性ホルモン高値、インスリン抵抗性体質などがある場合は、それぞれの治療を行って、ホルモン状態を適正化していきます。
基礎体温を測定し、高温期の長さやホルモン値を測定し、黄体機能不全の有無を検査します。黄体機能は毎周期ごとに異なるといわれ、評価が困難という意見もありますが、当院では、治療を行う上で重要であると考えて検査を行っています。
卵胞が成熟して排卵した後に、黄体となり、黄体ホルモンを分泌します。未成熟な(小さい卵胞で排卵してしまう)卵胞からは、十分な黄体ホルモン産生が起こらないため、卵胞成熟を促し、成熟した良い卵胞を作る治療を行います。
また、卵胞の質を改善させる(抗酸化対策)ための治療を行っています。ビタミンC、ビタミンE 療法、メラトニン、運動療法、排卵誘発剤の内服、注射療法)
原因不明の流産の多くは、偶発的な胎児の染色体異常による流産です。男女ともに、35歳以上になると、卵子や精子の老化により、受精卵の染色体異常が生じやすくなります。
加齢による流産率の増加に対する、確実な治療はありませんが、少しでもリスクを低下させるために、できることがあります。
精子のアンチエイジング、抗菌剤、漢方薬療法、サプリメント(L-カルニチン)
染色体異常をおこしやすい、夫婦の生活習慣がないかをチェックします。
明らかに卵子、精子の染色体異常リスクを高める、喫煙は、夫婦ともに、やめましょう。そのほか、女性の場合、肥満、やせなどの体重異常は、流産リスクを高めます。適正体重をめざしましょう。昔から運動習慣のない女性では、卵の質がよくない傾向があります。ウォーキングなどの運動を生活にとりいれましょう。そのほか、偏った食生活、睡眠障害、ストレスなどを防いで、卵子の質をよくしましょう。、詳細は、「30代までに絶対にしっておきたい卵子の話」へ。
男性の場合は、肥満、メタボは、肉食過多、インスタント食品の過剰摂取は、女性ホルモンや環境ホルモン過多となり、男性ホルモンが低下し、造精機能が低下します。肥満をさけ、バランスの良い食生活を。サウナや長湯などの高温環境も精子の状態に影響します。薄毛予防薬(男性ホルモン阻害剤)は、精子を作らなくするため、飲まないようにしましょう。
受精卵の染色体異常を少しでも減少させるために、生活習慣から来る卵子、精子の異常による流産の回避、タバコ、過度の飲酒、薬剤、肥満、食生活、運動不足など卵子や精子の質を低下させる生活習慣についてカウンセリングします。
ホルモン検査の結果により、ホルモン療法を併用する場合があります。(高プロラクチン血症、男性ホルモン高値、インスリン高値、黄体機能不全、高FSH血症など)
不妊で受診の患者様は、初診用の予診カードと不妊外来用のカウンセリングシートの両方が必要となります。